こんばんは。
なつめれいなです。
主にマンガの書評・コラムを書いています。
掲載メディアのリンクは、下記のとおりです、
日刊サンさま、いつもありがとうございます。
日刊サンのコラムでは書ききれなかったことについて、後日談として書いているコラムです。
肩の力を抜いてご覧ください。
マンガライター・なつめれいなとは?
LGBTQのうちT(トランスジェンダー)・L(レズビアン)で、あらゆる本を読んでいる読書好きライターです。
マンガについては、月に延べ数で100冊近く(話数換算で600話)、ほぼオールジャンル読んでいます。その中でも、特に好きなジャンルをあげると、百合(ガールズラブ)を含むLGBTQ・スポーツ・お仕事・コメディです。
百合については、別サイトで思う存分語っていきます。
何卒よろしくお願いします。
『カノジョになりたい君と僕』とは?
『カノジョになりたい君と僕』とは、たかせうみ先生のマンガです。
ウェブコミックサイトの「GANMA!」で全50話が公開されています。
スマホアプリもしくは電子書籍などで読めるので、気になる方は読んでみてください。
桜ヶ池ヒメが恋愛とジェンダー理解を通して成長していく物語
主人公は、女子高生の桜ヶ池ヒメ。
そんな彼女が片思いしているのが、幼なじみの米沢アキラ。しかし、アキラは「身体は男の子で、心は女の子」いわゆるMtFです。
ヒメは、12歳のときに本人からMtFであることを打ち明けられます。そのことでよく周囲の男の子からいじめられているのを見ていたヒメは、恋心を隠してアキラのことを守ると決意。
やがてふたりは高校生になり、同じ高校に進学。これを機に、アキラは自身のジェンダーをカミングアウトして、高校では女子生徒として登校するようになります。
しかし、担任の先生や周囲の生徒は、ジェンダーに関してまったく理解しようとしません。そのことに腹を立てたヒメは、逆にアキラの学ランを着用して通学。
本作は、アキラのことを思うあまりちょっと尖った行動を取るヒメが、LGBTQの当事者やアライ(理解者)との出会い・やり取りを通して、自身のあり方を模索していく物語です。
『カノジョになりたい君と僕』コラム執筆の裏話
本作について綴ったコラムは、下記を参照してください。
NIPPONまんが研究所 第345回 女性として生きる選択をしたトランスジェンダーの物語
1.中立性をいかに保つか
最初にも書いたとおり、私自身がLGBTQのうちT・Lで当事者です。
そのため、LGBTQがメインテーマにある作品、百合(ガールズラブ)系の作品となると、どうしても当事者としての見方を、コラムにも入れてしまいます。
しかし、読者の方はそのことをご存知ありませんし、コラムの書き手としては中立性が必要です。
そのため、当事者としての感情はできるだけ入れず、ニュートラルポジションでどのように表現するのかに腐心しました。
2.残すものとカットするものの選別
2つ目は、残すものとカットするものについて、どのように分けるかですね。
これは本当に迷いました。
どの立場からでも書ける上、すべての要素を入れようと思ったら、とんでもない字数になってしまいます。
ちなみに、リンクしたコラムでは、メインキャラクターがヒメとアキラである点、文字数を考慮して、メインキャラクターから見たコラムを書きました。
『カノジョになりたい君と僕』でもっとも心に残ったエピソード
作内で語られたエピソードについて、印象に残ったものをひとつに絞るのは難しいのが正直なところです。
とはいえ、それぞれについて紹介すると長くなるので、特に好きなエピソードを紹介しましょう。
金髪に染めた心優しい少女~石山ユッカ
『カノジョになりたい君と僕』を読んで、もっとも心に残ったのは、石山ユッカのエピソードでした。
私にも身に覚えがありすぎるくらい経験があり、涙なしでは読めません。
石山ユッカは高校1年生で、ヒメやアキラとは同級生。
金髪に染めていてヤンキーに見えるため、はじめてのときはなかなか近寄りがたい雰囲気があります。
しかし、実際の彼女は細かい気遣いもでき、洞察力に優れた心優しき少女です。
石山ユッカのエピソード
ユッカが自らヒメに語った、エピソードについて第15話・16話より引用して、その一部を紹介します。
続きが気になる方は、コミックスでお読みください。
ユッカは、根は真面目な性格をしています。
それもそのはずで、中学時代はド真面目な陸上少女だったのです。
しかし、彼女には人にはいえない秘密がありました。
それは、同じ部の女の子を好きになったこと。
普段はそんな素振りを見せないよう、振る舞っていたユッカでした。
しかし、その感情があふれて抑えられなくなったある日、彼女に「好きですっ!」と自分の気持ちを伝えます。
その結果は……
(『カノジョになりたい君と僕』第15話・16話より)
ユッカの告白に思うこと
結論から書くと、告白したユッカは決して悪くありません。
なぜなら、好きになった人に「好き」と伝えただけのことだから。
好きになった人が同性だっただけのことで、それを理由にして軽蔑されるいわれはないのです。
ただ、告白された側の立場で考えると、いきなりだとびっくりするのはムリもないでしょう。
びっくりしてしまうところまでは、私も理解できるかなと思います。
ただ、告白されたことを理由にして除け者にする原因を作るなら、話は別です。
先にも書いたように、好きな人が同性だっただけで、恋の気持ちに変わりはありません。
私自身も「心と身体の性別が違うトランスジェンダーなんて単なる男」と言われたり、告白したらしたで「トランスジェンダーなんて気味悪い」と言われたりして長い間恋に対して臆病になるなど、深く傷ついた経験があります。
ジェンダーフリーな世界になることを祈って
『カノジョになりたい君と僕』は、LGBTQに属する人たちの本音、アライの人たちの気持ちがわかりやすく描かれている作品です。
世間的には、同性婚などさまざまな権利を求める運動が起こっているのをよく見聞きします。
ただ、それらを主張する前に、まずは私たちの本音を伝えて理解を求めるのが先ではないかと思うのです。
性もひとつの個性であること、グラデーションがあることを知るとともに、誰もが自分らしく生きられる世界を作る一助として、本作を紹介する結びとします。
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