トランスジェンダー(MtF)マンガライター・なつめれいなが『夢なし先生の進路指導』で伝えたかったこと

掲載情報

こんばんは。
なつめれいなです。

主にマンガの書評・コラムを書いています。
掲載メディアのリンクは、下記のとおりです、

Comic Candy
日刊サン

日刊サンさま、いつもありがとうございます。
日刊サンのコラムでは書ききれなかったことについて、後日談として書いているコラムです。

肩の力を抜いてご覧ください。

マンガライター・なつめれいなとは?

LGBTQのうちT(トランスジェンダー)・L(レズビアン)で、あらゆる本を読んでいる読書好きライターです。

マンガについては、月に延べ数で100冊近く(話数換算で600話)、ほぼオールジャンル読んでいます。その中でも、特に好きなジャンルをあげると、百合(ガールズラブ)を含むLGBTQ・スポーツ・お仕事・コメディです。

百合については、別サイトで思う存分語っていきます。

何卒よろしくお願いします。

『夢なし先生の進路指導』とは?

夢なし先生の進路指導』とは、笠原真樹先生が描いているマンガです。

小学館の「ビッグコミックスピリッツ」で連載されており、上記リンクから何話かが試し読みできるので、興味のある方は読んでみてください。

面白そうだと思ったら、単行本でお買い求めいただけると幸いです。

「諦める」のイメージがガラッと変わる物語

本作の舞台は、栄森高等学校。主人公は、元キャリアコンサルタントで数学教師をしている高梨律です。

彼の進路指導のスタイルは、生徒の夢を受け止めつつも、現実を示すデータやその厳しさを生徒に伝え、それでもその夢を目指す覚悟があるのかどうかを問いかけるもの。

そこから、生徒の間では「夢なし先生」と呼ばれています。

現代社会の風潮として、目標に向かって諦めずに立ち向かう人、夢を持ち続けてそれを追い続ける人が称賛されがちです。

しかし、現実には競争があり、才能のない人は自然に淘汰されてしまう厳しい世界でもあります。

それにもかかわらず、高校の進路指導や現実世界には、誰も正しい目標の持ち方や努力のしかたを教えてくれる人は誰もいないばかりか、質問しようものなら「そんなことは自分で考えろ」と叱責されてしまう始末。

本作の主人公・高梨律は、夢を持って努力することを称賛する一方で、正しい目標の持ち方・努力のしかたをよく教えないまま社会に送り出す進路指導、夢を持つことをもてはやす現代社会に抗い続けます。

本作は、そんな世の中のあり方に警鐘を鳴らす一方、諦める選択肢を提案することで夢に悩む人を救い出す、現代社会へのアンチテーゼ的な作品です。

『夢なし先生の進路指導』執筆に関する裏話

本作をテーマにしたコラムは、下記リンクよりお読みいただけます。
ぜひ下記リンクよりお進みください。

第353回 失意の中にいる教え子を救い出す!革新的な教師物語

1.どのエピソードを選ぶか

進路指導をテーマにしている作品だけあり、さまざまな職業が出てくるので、エピソードの選定は大変です。

読み進めていくと「将来の夢 未定」(コミックス2巻)とあり、話数としては多くなかったものの印象に残ったこと、現代っ子気質を表していると思い、このエピソードを選びました。

2.字数との戦い

これは、本記事に限ったことではないですね^^;

取り上げたいことが山ほどある中、すべてのエピソードを取り上げるととんでもない字数になってしまいます。

特にこのコラムは、700文字ですべてを書き切る必要があるため、常に苦労している点です。

『夢なし先生の進路指導』のなかで特に印象に残ったエピソード

先にも書いたように、さまざまな職業が登場します。

どの職業についても、あらゆる角度からその現実・リスクが余すことなく描かれている点が、本作の大きな魅力です。

その中で、現在進行形で描かれている「将来の夢 棋士」が、私の中で印象に残りました。

棋士を目指す高校2年生の少年

プロ棋士になるためには、東京と大阪にある奨励会入会試験(新進棋士奨励会:日本将棋連盟のプロ棋士養成機関)に合格して入会。

6級からスタートして、満21歳の誕生日までに初段。満26歳の誕生日を迎える三段リーグ終了までに、四段に昇段できなければ、退会しなければなりません。

四段というのはプロ棋士デビューできる段位を指します。昇段できるのはリーグの上位2人、毎年4人しかいません。確率にすると1~2割程度。奨励会入会試験に合格した人の中から、プロ棋士になれる人は1~2人しかいない厳しい世界です。

プロ棋士を目指している生徒は宇野正太郎。高梨のクラスに在籍している高校2年生です。

三段に昇段後、四段昇段を目指して対局を続けるものの、なかなか勝ち上がれません。

やりたい将棋とやりたくない将棋の間にある葛藤

通称「鬼の住処」と呼ばれる、三段リーグ。全員がその壁を突破したいと思い、切磋琢磨する世界です。

棋士であれば、誰もが持っているのが得意なスタイルと不得意なスタイル。

正太郎も例外ではなく、できれば自分の得意なスタイルで勝ちたいと考えています。しかし、一筋縄ではいかないのが、三段リーグ。そこに固執してしまうと、あっという間に飲み込まれてしまいます。

彼は最終的に高校を退学しますが、将棋に打ち込める時間が増えたにもかかわらず、三段の壁からなかなか抜け出せません。

それでも、やりたいことのためにやりたくないことをする勇気を持てないまま、年齢を重ねていくのです。

やりたくないことからは絶対に逃げられない

年齢を重ねてわかることがあります。それは「やりたくないことを避けられない」ことです。

どんなに好きなことであっても、やりたいことだけをやっていれば生きていけるほど甘い世界ではありません。いつかは、やりたくないこともやらなければならない時がきます。

どんな世界でも、プロになれるかアマチュアで終わるかの分岐点は、やりたいことをするためにやりたくないこともできるかどうかにあるのです。

今後、彼を待ち受ける運命はどうなるのか。楽しみに読み進めていきます。

現実は思い通りにいかないからこそしっかりした考えが必要

『夢なし先生の進路指導』を読んでわかるのは、現実はなかなか思い通りにいかないことです。

そこで慌てるのではなく、しっかりとその現実を把握して対策を立てる必要があります。

しかし、自分の頭で考えるのは限界があります。

遠慮なく周囲を頼り、アドバイスをもらいつつ準備を整えていきましょう。

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